MFUマイスター≪技術遺産≫認証受賞者① 佐藤正樹

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私たち日本人が、後世に伝え遺していかなければならない「メイド・イン・ジャパン」の技術力。
歴史と伝統からくるノウハウに裏打ちされた“ 技”“ 美”“ 心” を持つ受賞者を紹介します。

佐藤 正樹
糸作家・デザイナー 佐藤繊維株式会社 代表取締役

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だれも見たこともない糸をつくる。

深い東北では、冬、農業ができない。だから多くは、養蚕に頼ることで生きてきた。しかし大正から昭和へと時代が進むにつれ、日本人の衣服は着物から洋服へと移っていく。つまり生糸が売れなくなっていく。一方で、レーヨンなる合成繊維が生まれ、大胆な転換を迫られていた。
それでもここ山形の寒河江あたりでは、最新機械を手に入れる資金も、それを運ぶ交通手段すらなかった。曾祖父には、実業家としての才があったのだろう。彼は高値で売れる羊毛に着目した。牧場経営は無理でも、各農家で1頭か2頭の羊を飼うくらいならできる。食料のワラもある。こうして曾祖父は、山形、福島、秋田の各地から羊毛を集め、紡績業へと進出した。佐藤繊維の誕生であった。
4代目にあたる佐藤正樹さんが東京での勉学を終え、父の後継として故郷にもどった24年前は、その生産量においてピークを迎えていた。が、順風はそこまでだった。安い人件費を背景とした海外製品が大量に入ってきたからだ。落日は速かった。当時450社あった山形のニット工業組合も、今は23社を数えるのみである。あらがうべくもなかった。
19年前、イタリアで開催される糸の展示会「ピッテイ・フィラティ」を訪ねた。そこでは、売れるものを追いかけるのではなく、自分たちがつくりたい糸を自由につくっていた。おもしろさに、衝撃を受けた。まったく違う戦いをしよう。そう腹をくくった。しかし、最新の機械を買うゆとりはない。手元のものを使って、黙々と挑戦する日々が続く。世界にはきっと、それを欲しいと思う人が必ずいてくれるはずだ。その一念だった。
そうして10年前、厳しい審査ののち、イタリアへの出展が決まる。無名の会社だから、地下の、だれも来ないような隅っこの部屋があてがわれた。このときに出展したのは、通常1gで26~27mまでしか伸ばせないアンゴラヤギの毛が原料の「モヘア」を、52mまで細く伸ばした革新的な糸だった。それが、たまたま訪れた重鎮の目に留まった。やがてヨーロッパを代表する高級ブランド数社から、相次いで注文が舞い込んできた。直後に、アメリカのオバマ大統領の就任式とノーベル平和賞授賞式があった。ミシェル夫人は公式の場の慣例を破り、佐藤繊維の糸で編んだニットのカーディガンで出席した。ニュースはたちまち駆けめぐった。
狂ってんじゃないの? そう言われたこともある。破天荒で失敗続きの人生ではあったが、迷うことはない。つくりたいと思う糸の構想が、次へ、また次へと走らせている。こんな日本人がいることを、喜びたい。

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佐藤繊維株式会社
〒991-0053
山形県寒河江市元町1-19-1
TEL.0237-86-3134

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